その時、そいつの口が綺麗な弧を作った。
「へえー、そこまで言うなら全部斉藤さんは分かっているんだ?」
「……一応、そういうつもりで勉強はしているけど」
「じゃあ教えてよ」
その一言で負けず嫌いのわたしは火がついてしまった。
もう1人のわたしが心の中で「止めておけばいいのに」と囁いたのもわたしは無視してそいつの要求に答えた。
「んーどれにしよっかなー……これ、かな」
覗き込むと、応用問題の中でもかなり難しい部類に入るものだった。
昨日やって何とか理解できた所だ。
いちばん時間をかけた問題。
説明出来ない訳がない。
「分からないから教えてよ」
「……どこから?」
「全然。最初から分からない」
もう一度掴みかかりたくなった。
理解しているくせに分からないふりをしているあたりがうざい。
「……まずこの数字から解決しないといけないんだよね。
で、その後にこれ。
その後に……」