さっさと教室を出て行けばいいとでも思っていたわたしは甘かったことをたった今知った。



逃げきれずに捕まってしまい、ほとんど拉致のように空き教室に連れて行かれた。



不思議と目線はあまり感じなかった。



階段を引きずられるように上り、教室のドアが閉まった瞬間に口から言葉が飛び出した。



「あのさあっ……!言ったよね?

教えることなんて、しないから、って」



息が上がっていつもの調子が出ない。



「分からないやつに教えれば自分の復習にもなるだろ。

俺は得しかないし、別に斉藤さんだって損はしないから」



「でもわたしは、行かないって、言ったじゃん」



「えー斉藤さん酷くない?

困っているクラスメイトを見捨てるのお?」



「そのリサの真似は本当に気持ち悪いから、やめて。

本人がやっていても気持ち悪いのにあんたなんかさらに気持ち悪いから。

それに、あんた勉強出来るでしょ。

分からないふりしてわたしの時間、無駄にさせんな」