「嘘だぁ...!」


完全にやらかした。恥ずかしすぎる。

お父さんの方を振り向くと、呆れたように笑っていた。


「心結は本当に変わらないな」


そんな笑顔で言われたって、褒められている気は少しもしない。


「成長してないってこと...?」


恥ずかしさでムッとしながら返すと、お父さんは目を細めて首を振った。


「ずっと変わらずに可愛いってことだよ」


もともと熱かった頬が、さらに熱くなる。

お母さんも涙を拭いながら頷いていて、余計に気恥ずかしさが込み上げた。


──私のお父さんとお母さんはいわゆる、親バカというものだと思う。

小さい頃はまだ良かった。愛されてるって感じられて嬉しかったし、素直に喜べたから。

.....でも、今は。


「もう.....!私、カバンと制服部屋に戻してくる!」


恥ずかしさが勝ってしまって、素直にありがとうと言えない。

嬉しいんだけど、ちょっと重いとも感じてしまう。

わかってる、愛されてるんだから感謝すべきだって、私は恵まれているんだって。

でもどうしても、「私も好き」なんて恥ずかしくって言えないまま、小学校高学年くらいからもうずっと伝えられていない。


大人になったらこの気恥ずかしさも無くなっているかな。
そしたらまた、好きって言えるようになるかな。



そんなことを考えながら、幸せだなぁ私、なんて思えた。