ばたばたと階段を駆け下りて、そのままの勢いで思いっきりリビングの扉を開ける。
ソファーに座ってコーヒーを飲みながら新聞を読んでいたお父さんが、びくりと肩を揺らしてこっちを見た。
ごめんねお父さん、びっくりさせて、と心の中では謝りつつ、今はそんなお父さんに構っている暇はない。
私はスクールバッグを床に投げ置き、パジャマを脱ごうと手をかけながら、声を張り上げた。
「お母さん!どうして起こしてくれなかったの!?」
キッチンに立っていたお母さんが、私を見て目を瞬く。
みゆ、と小さく私の名前を呼んで、それから深く俯いた。
「え、お母さん...?どうしたの、体調悪い...?」
突然のその行動に、さっきまで張り上げていた声がすぼんでいく。
どうしようと焦っていると、お母さんがパッと顔を上げた。
「心結...今日から夏休みでしょ?」
そう言ったお母さんの声は、震えている。
笑いすぎてか、瞳に涙も滲んでいる。
かっと私の頬が熱くなった。