私の家の前にタクシーが着き、
私と彼は降りた。

タクシーが去ると、彼はまた一度は
離れた手を繋いだ。


そして私の正面に立つと、もう片方の手で
私の頭を優しく撫でた。


彼はとても優しい顔をしていた。

彼の瞳に映る私を優しく守るかの
ようにゆっくりと瞬きを繰り返している。


突然、ハッと何かを思い出したかの
ように腕時計を見ると、


「貴方の生まれた日に一緒に居る事が
 できてとても幸せでした。
 たくさん歩かせてしまって
 ごめんなさい。
 今夜はゆっくり休んでください。
 おやすみなさい」


そう言って住宅街へと消えて行った。