ーポ〜ン

演奏が始まると、ホールは一気に
演奏者の音楽で包み込まれた。

それと同時に、桜都の瞳にはグランドピアノに
座る、一人の男の子が映し出された。

桜都はその男の子から目が離せなかった。

それはとても不思議な感覚だった。

桜都はなんだか体が熱くなってきたのを感じて
頬を手で冷ましたけれど、ますます熱くなるばかりだった。

それは、一目惚れだった。

桜都は一瞬のうちにして、この男の子に
心を奪われてしまったのだ。

聴こえてくるピアノの音が、
より一層桜都の気持ちを高めた。




気がついたら演奏は終わっていた。
それはとても短い間だった。

男の子は演奏が終わってお辞儀をした後、
にっこりと微笑んだ。

桜都はポッと頬を赤らめるのと同時に、胸をチクリと痛めた。

終わってしまった。

短い恋の時間は終わってしまったのだ。


、、けれど桜都は見逃さなかった。

男の子が一瞬、ほんの少しだけ見せた
切ない笑顔を。