急いで塾を出ると、
目の前には母の車があって、
時雨は黙って助手席に乗りこんだ。

母も、目的も何も言わぬまま、
車を走らせた。

けれどしばらくすると母は車を止めて、
口を開いた。

「美樹ちゃんがー。」


その後母が言ったことはよく覚えていない。




気が付いたら時雨は病院に居て、
“篠原”と書かれた部屋の病室に入った。
そのときー。


ーピーッピーッピーッ



その音は鳴り続けた。

その場にいる人が泣きじゃくる中を、
虚しく、儚くー。





2月6日19:27、

時雨の愛おしいその人は、美樹は、






死んだ。