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時雨がグレーのベストを着て
ネクタイをしめたとき、
ちょうど美樹が訪ねてきた。

「時雨っ。今日がんばってね!
私、客席から聴いてるから!!」

そう言って満面の笑みを浮かべた美樹を見て、
時雨は心がほっとした。

そして、時雨は美樹の肩にぽんっと
優しく手を乗せて、

「行ってくるよ。」

と言った後、その場を去っていった。