その日の夜はベッドに入ってから
なかなか寝付けなかったけれど、
寝ついてからは自分でも驚くほど
ぐっすり眠ることが出来た。



次の日になっても、
桜都はやっぱり昨日のことが忘れられなくて、
学校では勉強が手につかなかった。

(とはいっても、普段もそれほど熱心に
授業を受けず、ほとんど教科書やノートに
落書きをしているが。。)

帰ってきてからと言うもの、
ランドセルも置かずにそのままアトリエに
直行して、すぐに絵を書き始めた。

それは、ピアノを弾いている、
時雨の横顔だった。

二重のシュッとした目には、
宝石のように輝く瞳があって、
その瞳は真っ直ぐ鍵盤を見つめていた。

桜都はノンストップで鉛筆を走らせた。

桜都はそれまで風景画ばかりを描いていて、
人を描いたことはなかった。

人を描きたいと思ったのはこれが初めてだった。