紫陽花も散り、夏になった。
 向日葵が綺麗に咲いていたこの時期、既に、夏期講習やら、補習やらで、勉強漬けになっていた。
 あたしは、T大の評価がA判定だったから、学校の夏期講習だけ行っていた。
 夏期講習は、時間が、いつもと違うから、ゆうに会えなかった。
 長い夏休みが終わり、夏期講習はなくなった。
 学校に行く前に、いつものベンチに座った。
 すると、ゆうが来た。
 「あっ!!
今日は、いた!!
最近、全然、会えなかったけど、何していたの?」
「夏休みは、夏期講習で…。」
「夏期講習?!
それならそれで、連絡してくれたら良かったのに…。」
「ごめんなさい。
スマホ、親に取り上げられてたから…。」
「そっか…。
じゃあ、しかたないか…。」
「ごめんなさい。」
「いいよ。
受験生だもんな。」
「うん。」
 この日のゆうは、ヨレヨレのスーツじゃなかった。
 黒のスーツだけど、後ろにスワロフスキーで、十字架が描かれているものだった。
 「(高そうなスーツ…。)」
「どうしたの?」
「スーツ…。」
「スーツ?」
「初め見た時のより、「カッコいいなぁ。」と思って…。」
「あ…あぁ…。
あの時は、ホント、売れてなくて…。
スーツもいいのが買えなかったんだ。」
「…。
ゆうは、仕事、何をしてる人?」
「えっ…。
し…仕事…?」
「そう。」
「…。
軽蔑しない…?」
「軽蔑…?
(そんなにヤバいお仕事なの?)
(でも、きかなきゃ!!)
うん!
軽蔑しない!!」
「じゃあ、言うよ?
ホスト。」
「ホ…ス…ト…?
ホストって…。
女の人から、お金もらって、えっちなことするやつでしょ?!」
「はずきちゃん。
間違えてる…。
確かに、ホストは、女性からお金をもらうけど、男性客が来たら、男性からももらうからね?
それから、男性客も来るんだから、えっちなことはしません。
どっから、そんな知恵出したの?」
 ゆうは、大笑い。
 「そ…そんな…笑わないでよ。
そっちの知識ないんだから…!!」
「ごめん、ごめん。
そろそろ学校だろ?
気をつけて行けよ?」
「言われなくても!!」
 あたしは、学校に向かった。