テーブルの上には名刺も散らばっていた。
興味本意で手に取るとそれは瞬くんの名刺で、書かれている肩書きに私は目が点になる。

「ええっ?!瞬くん、支店長なの?」

「え?うん、まあね」

「この歳で?すごい!」

「すごくないよ」

「すごいよ。だって保育士でいったら園長先生だよ。私にはまだまだ道程が長いものなんだよ」

興奮する私に、瞬くんは苦笑する。

「たまたま、競争率が低かっただけ。社員数も少ないしね」

「それでもすごい。お仕事大変だよね、しんどくない?」

支店長と園長を同等と考えると、その大変さは計り知れない。社員をまとめなきゃいけないし責任も取らなきゃいけないし。(って、保育士しか知らない私の勝手な想像だけど。)

「うーん、しんどいから、結衣が癒して」

「癒す?」

私が首を傾げると、瞬くんは両手を広げた。

「ぎゅーして?」

そっ、そういうことですかっ。

私はドキドキしながらも瞬くんに近付く。
そっと首に手を回してぎゅーっとすると、瞬くんは私の腰に手を回して強く抱きしめた。

これは、私がぎゅーして癒しているというより、私が瞬くんにぎゅーされているのではないだろうか。
なんて野暮なことが頭をよぎったけれど、そんなことよりも瞬くんとくっついていることに幸せを感じて、大変に満たされた。

どんな癒しグッズよりも効果抜群だ。