瞬くんのマンションは駅近のとても綺麗な建物だった。エントランスホールも落ち着いた明かりの照明が柔らかく照らし、高級そうな造りをしている。

瞬くんの家に上がるのは初めてだ。
一人暮らしをしているとは聞いていたけど、こんなに立派なマンションだとは思わなかった。
そういえば男の人の家にお邪魔するのも初めてかもしれない。

リビングにはシンプルなローソファとローテーブルが置かれていて、とてもスタイリッシュだった。

「クッキー食べてもいい?」

ソファに座って、瞬くんは先ほど私が渡したクッキーの箱を取り出した。しゅるしゅるとリボンをほどく。それを見ているだけで私は緊張する。ちゃんと味見はしたけど、やっぱり心配になってしまう。瞬くんの口に合うだろうか。
瞬くんは長い指でクッキーをつまむと、躊躇いもせずパクリと口に入れた。

「旨い。すごく!」

「ほんと?よかった」

瞬くんの言葉に、私はほっと胸を撫で下ろした。やっぱり美味しいと言ってもらえると嬉しいものだ。

「手作りのお菓子なんて初めて食べた」

「そうなの?」

「うん、だからすごく嬉しいというか、感動というか。カードも」

「でもなんか子供っぽくて」

「いや、結衣の気持ちが嬉しい。こんなに心のこもったプレゼント初めてもらった。本当に、ありがとう」

私の方こそ、こんなにも喜んでもらえて嬉しい。嬉しさのあまり胸がじーんとなる。
胸がいっぱいすぎて、返事の代わりに満面の笑みで応えた。