未菜ちゃんに連れられて来たのは老舗の百貨店だ。
“百貨店”という響きだけで何だか高級で大人っぽい。それを未菜ちゃんに言ったら、結衣ちゃんが世間知らずなだけだと一蹴されてしまった。

「マフラーとか手袋は定番だけど使いやすいよね」

「なるほどー」

私たちは商品をひとつひとつ手に取ってみてはまた戻すを、さっきからずっと繰り返している。
たくさん商品はあるのにどれもピンとこず、選ぶのはとんでもなく難しい。
未菜ちゃんも一緒にうーんうーんと頭を悩ませて考えてくれたけど、結局選ぶことができなかった。

とりあえず休憩とばかりに、私たちは百貨店内にあるカフェに入った。

「いいなー、クリスマスディナーのあとはお泊まりするんでしょー?羨ましい」

「え、そうなの?」

きょとんとしながら言うと、未菜ちゃんに睨まれてしまった。

「ちょっとちょっと結衣ちゃん、本当に高校生じゃないんだから。私たちもう26だよ。大人だよ。結衣ちゃんがウブすぎて心配になってきた」

「えー、だってそんなこと瞬くんは一言も……。あ、未菜ちゃんもクリスマス彼氏とデートするんだよね?」

私の言葉に、未菜ちゃんはさらにじとりと睨んでくる。そして低い声で言う。

「半年前に別れましたけど何か?」

「そうなの、ごめん」

未菜ちゃんが彼氏と別れていたなんて知らなくて、私は萎縮してしまう。地雷踏んだかしら。ていうか、ちゃんと教えておいてよ、もー。

私の焦りとは裏腹に未菜ちゃんは大きなため息をつくと、

「あーもう、結衣ちゃんといい朱里ちゃんといい、幸せを分けやがれー!」

そう叫んでクリームソーダをガツガツと飲み干した。
未菜ちゃんだってクリームソーダなんか頼んじゃって、子供っぽくて可愛い。でもそんなことを言おうものなら更に睨まれそうだったので、私は心の中でクスクスと笑った。