話を終えた奈緒が窓のカーテンを開けると、そこからは傾いたビルが見えた。

「ホテル・シャトーが、文字通り『斜塔』になってしまった訳だ」


私は皮肉っぽく苦笑いして見せたが、奈緒は真面目な顔で黙っていた。

そして思い立った面持ちで、口を開く


「…ねぇ、進也君」

「ん?」

「もし…
もしもだよ?
傾いたのはあのビルじゃなかったら…
どうする?」