不安だけが胸に募った。



僕たちはもうすぐ剣道の大会がある。そのため、練習を怠るわけにはいかない。しかし、千夏の方が心配だ。

「気にすんな。練習、行って来い」

前に一度練習を休んで千夏のお見舞いに行った時、千夏は笑ってそう言った。そのため僕は練習が終わってから千夏のところへ行くことにしている。

「水野先輩に一本取られちゃったんだよね」

「水野先輩はスピード型だからな。防御型のアンタとはちょっと相性が悪いかもね」

病室で話すことは、剣道のことばかりだ。千夏の方からいつも「練習どうだった?」と訊いてくる。アドバイスを色々くれるから僕は嬉しくてつい話してしまうんだ。

「そういえば、手術はいつなの?」

僕が訊ねると、「まだ未定。でも、検査ばっかでほんとに嫌になる!」と千夏は笑った。

「検査ってどんなことするの?」

「色々ありすぎて話しきれないよ」

その時、初めて千夏の目にさっきとは違う感情が見えた気がした。この感情はーーー。