検査結果をお父さんたちが千夏に伝えるのを、僕はうつむきながら聞いていた。剣道は、千夏にとってかけがえのないもの。それを奪うなんて……。

「そっか」

泣き喚くんじゃないかと覚悟していたけど、千夏が言ったのはたったそれだけ。顔を上げれば、千夏はいつものように笑ってた。

僕はもちろん、お父さんたちも驚いている。ショックなことのはずなのに、千夏が一番落ち着いてるんだから……。

「ちょっと疲れた。休ませて」

千夏がそう言ったから、僕たちは病室を出る。それでも戸惑いは隠せなかった。

「何で、あんな風に笑っていられるんだろう……」

僕がそう言うと、お母さんは「もしかしたら、自分の体のことだし何となくわかってたんじゃないかしら」と呟いていた。

「手術の日を決めないとな」

お父さんが深呼吸をし、言う。手術をすれば治ると聞き、だいぶ落ち着いたようだ。

「病気が発見されてよかった」

そう笑う二人の後ろで、僕は胸騒ぎがして病室の方を振り返る。中で一体、千夏はどんな表情をしているんだろう。