「千夏先輩、やっぱり顔色悪いよね」

「大丈夫なのかな……」

やっぱり他の人も思ってたんだ。僕は千夏の方を見る。千夏は主将と真剣な顔で話をしていた。手に持っている竹刀を振っていることから、剣道関係の話だろう。その横顔はやっぱり体調が悪そうだ。

心配をまた感じたその時だった。千夏の体がグラリと倒れる。それはまるで、スローモーションのようだった。

「千夏!?」

目の前にいた主将が顔を真っ青にして叫ぶ。その声に、僕らも千夏の周りに集まって「千夏!!」と呼びかけ続けた。しかし、千夏は意識を失ったままでさらに顔色は悪くなっている。

「先生呼んで来い!!」

「千夏!!ねえ、しっかりしてよ!!」

武道場は喧騒に包まれ、それは学校中に広まっていく。AEDを持った先生が何人も駆けつけ、救急車も呼ばれ、武道場には生徒が何事かと集まる。

僕は、体を震わせることしかできなかった。



検査の結果、千夏には心臓の疾患があることがわかった。幸い、手術をすれば治る病気だ。しかしーーー。

「もう剣道はできない」