「何回も放送で呼ばれてたよ!!あんた、勝手に試合放棄して何考えてんのさ!!」

怒る千夏にだんだん腹が立ち、「うるせえ!!」と僕は怒鳴った。

「剣道なんて、どれだけ練習してもうまくならない!それなのに、「千夏の弟だから」って勝手に期待されて……。血なんてつながってないのに……」

どうせ、僕なんてと呟いていると空しくなって泣きそうになった。グッと唇を噛み締める。千夏は優勝するたびに嬉し泣きができるけど、僕は初戦敗退をして唇を噛み締めることが多い。もう慣れっこだ。

「まっすぐにぶつかれ!!」

千夏は僕の肩を強く掴む。その顔は悔しそうに嘆いていて、僕は驚いた。

「あたしがあんたを強くする。だから、ちゃんと前を見ろ!」

その日から、僕は千夏に特訓してもらうことになったんだ。



「もう少し振りかぶれ!」

「うん!」

高校生になった今でも、千夏に特訓をお願いしてもらっている。千夏も剣道部で活躍している。