千夏の目からは、止めどなく涙がこぼれていく。まるで今まで強がってきた代償のように……。その涙を、千夏は何度も乱暴に拭った。

「死にたくない!でも、剣道ができないなんてもっと嫌だ!!あたし……あたしは……もっと戦いたかった……。全国大会に出て……世界一の剣士になりたかった……」

僕の胸が痛んだ。もう千夏は、好きなように剣道ができない。他のことを見つけろなんて僕には言えない。ただ、泣いている千夏を見つめて……。

神様がもしもこの世界にいるなら、訊きたい。どうして僕じゃなくて千夏だったのか。どうして千夏から剣道を奪うのかを。

いや、本当は神様なんてどこにもいないんだ。神様がいたら誰もが笑って、病気も戦争もない世界が生まれていたはずだから。差別とか、そんなものがない綺麗なだけの世界があったはずだから……。

「……ごめん……」

僕は何度も呟いた。千夏の声を聞いて、涙を見て、胸がどんどん苦しくなって涙が勝手に流れていく。