「お昼を買いに行ったら、いなくなっていて……。トイレにもどこにもいないし……」

お母さんは完全にパニック状態だ。僕は「お母さん!」といつもより大きな声で呼びかける。僕までパニックになっちゃダメだ。落ち着かないと……。

「僕、千夏の行きそうなところを探してみるよ」

電話を切った後、主将には事情を話して帰らせてもらうことになった。道着から制服に着替え、かばんを手にして自転車に飛び乗る。

僕はそのまま自転車を走らせ、千夏がよく行く場所を探してみることにした。

本屋、ゲームセンター、カラオケ、ボウリング場などを見て回るけど、千夏はどこにもいない。

あちこち見て回るうちに、もう夕暮れが迫ってきていた。空は茜色に染まっている。僕は自転車を止め、他に千夏が行きそうな場所を考えた。

お父さんたちも探しているみたいだけど、見つかっていないみたいだ。でも、お金は持っていないだろうし遠くへは……。

ふと、頭の中にある光景が思い浮かぶ。それは幼い頃、千夏とした会話だった。