「そうだ!千夏、手術の日が決まったぞ!!」

「本当!?」

千夏だけでなく、僕も言った。

「ああ、手術の日はーーー」

お父さんが言った手術の日は、僕の大会の終わった次の日だった。あと一週間もない。千夏が胸にそっと手を当てる。

「もうすぐ、病院のベッドとおさらばだね!」

僕とお父さんはニコリと笑った。

「ああ。帰ったら、どこか旅行にでも行こう。お前が前から行きたがっていた北海道にでも行こうか」

「やった〜!!おいしいラーメン食べたい!!」

喜ぶ千夏を見て、僕は複雑な気持ちになる。僕が剣を振っている間千夏はベッドの上にいて、僕がこれから剣を握る時も千夏は見ていることしかできない。……あれだけ、上手だったのに。

千夏の夢は、剣道教室を開くことだった。そしていつかは世界大会に出て優勝したいとも話していた。その夢は、もう叶わないのだ。

「どうして千夏が……」

僕は心の中で呟いた。

「千秋?」