「必要なくなるなんて、そんなこと! あたしはまだまだ覚えなきゃならないことばっかりで……」
「ううん、姫乃さんならすぐ覚えられるよ」
ニコッと笑顔を向けてくれる上山先輩に、たとえお世辞だとしても嬉しくなる。
そんな和やかな会話を三人で少しした後、
「今日は急に誘って遅くなっちゃったから、送るよ」
あたしに向かってそう口を開いたのは、隼人先輩。
「えっ、大丈夫ですよ! うち、そんなに遠くないですし!」
「いやいや、俺も同じ方向だから」
……確かに。
中学から同じだった隼人先輩とは同じ学区で、そう離れていない。でも……。
先輩は全く気にしていないのかもしれないけど、本気度はどうであれ先日告白してフラれたばかり。
一緒に帰るとか、何を話したらいいのか分からない。それに……。
「菜子は俺が連れて帰ります」
あたしが戸惑っていた正にその時。
聞こえた声と同時に、グイッと後ろに引かれた身体。
振り向いてみてみると、あたしの身体を引き寄せて言ったのは──。