「そんな顔しなくても大丈夫だから。……俺の方が姫乃に会いたかったところあるし」
「えっ」
「いやっ、あの、なんか話があったんだろ?」
あたしが聞き返そうとすると、顔を真っ赤にして話を逸らす結城くん。
「姫乃が何か言いたそうにしてたのは気付いてた」と、続けられて。
「あ、うん、あのね……」
心の準備をしていなかったあたしは、ためらいながらも口を開く。
「隼人先輩のことなんだけど……今はもう何とも思ってないよ。告白したのは本当だけど、彼女いるからってハッキリふられてるし、それに……」
言いながら顔を上げると、結城くんはさっきよりもずっと顔を赤く染めていて、思わずキョトンとする。
すると、結城くんは口元に手をあてて。
「俺、そんなに態度に出てた? 姫乃にこんなこと言わせるとか、ダサすぎ……」
何故だか、そう告げて脱力する結城くん。
わけがわからず、「え? え?」と首を傾げるあたしに、結城くんは改めて顔を上げ……。
「ありがと」
少し照れたように微笑んだ。