「なに? どっか行くの?」
「あ、うん、ちょっと友達に呼び出されて……」
説明もそこそこに、あたしは笑ってごまかして玄関へと直行する。
お姉ちゃん、なかなか鋭いからな。
ママに余計なこと言ってないといいけど……。
そんなことを考えながら靴を履いて外に出ると、
「結城くん!」
家のすぐ側の外壁に背中を預け、結城くんが立っていた。
すぐさま彼に駆け寄ってみれば、その姿は見慣れた制服のまま。
背負ったリュックサックと、肩にかけたエナメルのスポーツバッグ。
「もしかして……今まで練習してたの?」
「あぁ。さっき中村から姫乃が待っててくれたこと聞いてさ、ごめん」
謝る結城くんに、あたしはぶんぶんと首を振る。
「ううんっ!約束してたわけじゃないし! それにあたし、中村くんから遅くなるかもって聞いてすぐに帰ったから……」
申し訳なくなるのはあたしの方。
「まさか、うちまで来てくれるなんて……」
昨日、家まで送ってくれたから知っている。
結城くんの家が反対方向だってこと。
ただでさえ遅いのに、うちに寄ったりしたらもっと帰りが遅くなるわけで。