「……菜子、どんだけ卵焼き細かくすんのよ」
「へ……?」
茜ちゃんの言葉にハッとして、手元のお弁当に目を向ける。すると、箸で半分にしようとしていたはずの卵焼きが、もはや何等分なのかわからないくらい細かくなっていた。
「戻ってきてからずっとボーッとしちゃって。マネージャーのこと考えてんの?」
「あ、うん……」
茜ちゃんに隠す理由もなくて、素直にこくんと頷く。
「部活とか、マネージャーとかやるつもりなかったんだけど……先輩ほんとに困ってるみたいで」
「うん。じゃあ、やってあげる?」
「でも……結城くんちょっと嫌そうだったよね?」
あたしの気持ちどうこう以前に、隼人先輩があたしをマネージャーに誘っているのを知った結城くんは、明らかに嫌そうな顔をした。
表情だけじゃない。
実際に結城くんは、あたしをマネージャーにするのは反対みたいな発言をしていた。
……そういえば、サッカー部の練習を見に行こうとしてたって言ったら、同じような顔をされたことがあったっけ。