思いがけない茜ちゃんの発言に、口をパクパクさせる。

結城くんとデートすることになったことは、茜ちゃんに報告していた。

でも、チューって……。


「してないよ! そんなこと全然っ!!」

「えー……じゃあ、手ぇくらい繋いだ?」


玄関には他の生徒がどんどん入ってきて、あたし達は邪魔にならないようにその場から退けるように、教室へと歩き始める。


「あ、茜ちゃん……」

「どうなの?繋いだの?」


ちょっと恋愛経験者だからって、何でもないことのようにズカズカ聞いてくるのずるい。でも……。


「手は……繋いだ」


あたしは真っ赤になりながら、観念して頷いた。

昨日の夕方、結城くんは家まで送ると言ってくれ、その……帰り道。


隣を歩きながら、そっと触れてきた手のひらは、きゅっとあたしの手を握った。

その瞬間、ドキンと鼓動が跳ねて、心臓の方から一気に身体が熱くなって……って。


「ちょ、菜子、赤くなりすぎ」

「だって……!!」


思い出したら恥ずかしくて、自然と赤くなってしまう。

どうしようもなくて両手で顔を覆うけど、この右手が覚えている、結城くんの手の温もり。