「……のさん、姫乃さん!」
「あっ、はいっ!!」
「大丈夫? さっきからずっとボーッとしてるけど、体調悪くなっちゃった?」
グラウンド脇の手洗い場。
横から上山先輩に心配そうな顔で覗き込まれ、あたしはぶんぶんと首を横に降る。
今日はミーティングだけで帰る予定が、結局最後まで部活に参加してしまった。
「大丈夫です、ちょっと考え事しちゃって」
「考え事って、結城くんのこと?」
「へっ……!?」
ボンッと音を立てる勢いで、顔を赤くするあたし。すると、
「あはは、姫乃さんは分かりやすいなー。ねぇ、保健室で何があったの?」
「っ……!」
ニヤニヤとしながら上山先輩に一歩近寄られ、あたしは更に顔を赤くする。
保健室で……。
「な、何もないですよ! いいから早く片付けを……って、あれ?」
「片付けならもう終わったよー」
洗浄するため、山積みにしていたスクイズボトル。残っているのはあたしが手にしていたひとつだけで、上山先輩は洗い終わったものを入れたカゴを持ち上げ、笑った。