昨日の今日で気まずい……と、思っているのはあたしだけ?


昨日あんなことがあって、どんな顔をしたらいいのか分からなくて話しかけられずにいたのに、望くんはいつもと何も変わらない。

スコアシートを覗き込んで、「ふーん」と呟く。


「丁寧に書いてんじゃん」

「そんなことないよ、この辺とか適当だし……」


自分だけが見るものなら殴り書きでもいいけれど、これは部員のみんなが見るものだし、何より上山先輩が記入したページはとても綺麗。

だから、代理として少しでも綺麗に書いておきたい……って思っていたのに、今のあたしの頭の中からはスコアシートのことなんて吹き飛んでいた。


代わりに頭の中にいっぱいなのは、望くんのこと。

昨日のアレは一体何だったんだろう。
キス……してくれようとしたんじゃなかったの?


聞きたいのに、聞けなくて。

真っ正面から見る望くんの顔に、変に意識してしまって俯く……と、


「何か手伝おうか?」


望くんは、お決まりのようにそう聞いてきてくれた。