「姫乃さん大丈夫? 手伝おうか?」
「いえ、もう終わるので!ありがとうございます!」
「そっか、じゃあお疲れさま」
「お疲れさまでした!」
声をかけてくれた2年生の先輩にペコッと頭を下げて、あたしは再びスコアシートへと目線を落とす。
土曜日、午前中の練習を終え、他の部員達が着替えて帰っていく中、あたしはベンチに腰掛けて、スコアシートを書いていた。
さっきから何度声をかけられただろう。
マネージャーは一人で大変と言えば大変だけど、みんなが手伝ってくれるから、さほど苦痛に思わない。
ありがたいなぁ……と思いながら、殴り書きになっている部分を消して記入し直していると、
「まだやってんの?」
今度は後ろからかけられた声に、ハッとして振り返る。
今まで声をかけてきてくれた部員達とは違う。
聴き慣れているはずなのに、ドキッとしてしまうその声は……望くん。
「あ、うん。ちょっと適当になったところを書き直してて」
なんてあたしが返事している間に、望くんはぐるりと回って目の前まで歩いてきた。