夏休み……そうだ、もうすぐ。

あたしはとりあえずマネージャーを終える。望くんは忙しいだろうけど、さすがに毎日は練習もないはず。

二つ返事で大きく頷こうとした……けれど、その瞬間、ふと思い出したことに笑顔を奪われた。


……茜ちゃん。


夏休みには沢山遊ぼうって、茜ちゃんと約束していたのに。
もし……もし、このままだったら……。


「菜子?」

「あ……ううんっ! 楽しみにしてるね!」


望くんに声をかけられたあたしは、取り繕うように慌てて笑顔を見せる。


「足止めしちゃってごめんね、行こう」


……と、再び歩き出そうとするけれど。

今度は望くんが立ち止まったままで、繋いでいた手がぐんと伸びた。


「望くん……?」


どうしたんだろうと名前を呼んで、開いたばかりの距離を一歩縮める。

すると望くんは俯きがちだった顔を上げ、


「……!」


思わずビクッとしてしまったのは、

望くんがそっと、あたしの頰に触れたから──……。