「いらっしゃいませ」
カウンターの向こうからマスターが声をかける。
チカと同年代くらいだろうか。
店内は暗く狭いけれど、レトロな趣のある趣味のいいバーだ。
ムードのある音楽が流れている。
このての曲をまったく知らないチカでも少し酔いしれてしまう。
カウンターに座るとマスターが「なににしますか?」とチカに聞く。
カクテルなどには疎いので「おすすめ」でお願いすることにした。
「わかりました」
カクテルができあがるまでしばらく
残りの仕事を片付けてしまおうか、明日でもいいか…と
考えていたけれど結局、時間を無駄にはしたくないので仕事を片付けることにした。
「できあがりました」
ノートパソコンをとじる。
マスターから受け取ったカクテルはきれいな薄いピンクだった。
そっと、口をつけてみるとさわやかな苺の味が口のなかに広がった。
(カクテルって意外と飲みやすいんだな…)
マスターと目が会う。
黒髪にスッとした輪郭、きれいに整った中性的な面立ち。
チカは急いで目をそむける。
「お客様は初めてのご来店ですよね」
マスターが話を切り出す。
「あ…はい、雰囲気のいいお店だったので…」
「それはそれは、ありがとうございます。」
その時、店の時計がなった。
ボーン、ボーン…
「あ、え…もう0時?」
「お急ぎのようでも?」
「ああ、いえ、今日の0時で私って30になるんですよ」
つとめて、にこやかに答える。
ある程度、年齢を重ねれば分かる。
こういうときにでる言葉は大抵「30に見えない」や「若く見える」のお世辞だ。
時々「もう○歳か」などの不躾な言葉を言うやつまでいる。……上司だが。
マスターはにこりと笑った。
「お誕生日、おめでとうございます」
チカはなんとなく拍子抜けした。
この年齢になると誕生日など嬉しくはないが「おめでとう」と言われるとなんだか嬉しくなる。
「ありがとうございます!」
チカは勢いよく立ち上がり、カウンターに膝をぶつけた。
「いたた…」
マスターはそれを見て軽く笑う。
そして言う
「私からもう一杯、プレゼントさせてください」
「…?カクテルをですか?」
「はい」
「いや…悪いですよ!今日、初めて来たのに…」
「いいんですよ、ご来店記念だと思って…そのかわりこれからも来てくださいね」
マスターの中性的な顔がミステリアスな笑顔を浮かべている。
「…はあ…じゃあ、お言葉に甘えて…」
(実は私お酒はあまり得意じゃないのよね)
それでも、できあがったカクテルはとてもきれいだった。
上から薄いブルー、そしてどんどん濃いブルーへとグラデーションになっている。
味も先程とは違い、ほどよく甘いが爽やかな後味を残すチカの好みのカクテルだった。
と、そのときスマホが点滅しているのに気づいた。
「あ、ヤバイ!LINE見るの忘れてた!」
上司からだった。どうやら、また新しい仕事が入ったらしい。
しかもそれは、入社したときからチカが手掛けたかった夢のような案件!
チカはその場で叫びそうになった。
これは、すぐにでも取りかかりたい。まずは、残りの仕事を片付けて…
「マスター!今、仕事が入ったの…ずっと取りかかりたい案件が回ってきて…」
「すごいですね、もう誕生日プレゼントが2つも」
チカはあまりの嬉しさに距離感を忘れてマスターの顔を覗きこんだ
「ええ、このカクテル、すごく美味しかったです」
「…!それはよかったです」
心なしかマスターの顔が赤らんで見えたがもちろん、チカは気づかない。
「あの!カクテルありがとうございます!また来ますから!」
カウンターの向こうからマスターが声をかける。
チカと同年代くらいだろうか。
店内は暗く狭いけれど、レトロな趣のある趣味のいいバーだ。
ムードのある音楽が流れている。
このての曲をまったく知らないチカでも少し酔いしれてしまう。
カウンターに座るとマスターが「なににしますか?」とチカに聞く。
カクテルなどには疎いので「おすすめ」でお願いすることにした。
「わかりました」
カクテルができあがるまでしばらく
残りの仕事を片付けてしまおうか、明日でもいいか…と
考えていたけれど結局、時間を無駄にはしたくないので仕事を片付けることにした。
「できあがりました」
ノートパソコンをとじる。
マスターから受け取ったカクテルはきれいな薄いピンクだった。
そっと、口をつけてみるとさわやかな苺の味が口のなかに広がった。
(カクテルって意外と飲みやすいんだな…)
マスターと目が会う。
黒髪にスッとした輪郭、きれいに整った中性的な面立ち。
チカは急いで目をそむける。
「お客様は初めてのご来店ですよね」
マスターが話を切り出す。
「あ…はい、雰囲気のいいお店だったので…」
「それはそれは、ありがとうございます。」
その時、店の時計がなった。
ボーン、ボーン…
「あ、え…もう0時?」
「お急ぎのようでも?」
「ああ、いえ、今日の0時で私って30になるんですよ」
つとめて、にこやかに答える。
ある程度、年齢を重ねれば分かる。
こういうときにでる言葉は大抵「30に見えない」や「若く見える」のお世辞だ。
時々「もう○歳か」などの不躾な言葉を言うやつまでいる。……上司だが。
マスターはにこりと笑った。
「お誕生日、おめでとうございます」
チカはなんとなく拍子抜けした。
この年齢になると誕生日など嬉しくはないが「おめでとう」と言われるとなんだか嬉しくなる。
「ありがとうございます!」
チカは勢いよく立ち上がり、カウンターに膝をぶつけた。
「いたた…」
マスターはそれを見て軽く笑う。
そして言う
「私からもう一杯、プレゼントさせてください」
「…?カクテルをですか?」
「はい」
「いや…悪いですよ!今日、初めて来たのに…」
「いいんですよ、ご来店記念だと思って…そのかわりこれからも来てくださいね」
マスターの中性的な顔がミステリアスな笑顔を浮かべている。
「…はあ…じゃあ、お言葉に甘えて…」
(実は私お酒はあまり得意じゃないのよね)
それでも、できあがったカクテルはとてもきれいだった。
上から薄いブルー、そしてどんどん濃いブルーへとグラデーションになっている。
味も先程とは違い、ほどよく甘いが爽やかな後味を残すチカの好みのカクテルだった。
と、そのときスマホが点滅しているのに気づいた。
「あ、ヤバイ!LINE見るの忘れてた!」
上司からだった。どうやら、また新しい仕事が入ったらしい。
しかもそれは、入社したときからチカが手掛けたかった夢のような案件!
チカはその場で叫びそうになった。
これは、すぐにでも取りかかりたい。まずは、残りの仕事を片付けて…
「マスター!今、仕事が入ったの…ずっと取りかかりたい案件が回ってきて…」
「すごいですね、もう誕生日プレゼントが2つも」
チカはあまりの嬉しさに距離感を忘れてマスターの顔を覗きこんだ
「ええ、このカクテル、すごく美味しかったです」
「…!それはよかったです」
心なしかマスターの顔が赤らんで見えたがもちろん、チカは気づかない。
「あの!カクテルありがとうございます!また来ますから!」