「まあ、それは、そうなんですけどねー」
と高倉は、平気であやめにも失礼なことを言う。

 こういう男だから、楽な部分もあって、なんだか怪しい使用人だが、雇っているのだが――。

「でも、基様。
 そのルックスで、やさしい言葉のひとつもかけてあげたら、女性はみな、クラッと来ると思いますけどねー」

「なんの話だ?」

「あやめ様が気に入ってるから、此処に住まわせてらっしゃるんでしょう?」

「……そんなことは一言も言っていないが」
と言い返してみたが、高倉は、ああそうですか、と、どうでもよさそうな返事をする。

 じゃあ、訊くなっ、と思う基の前で、高倉は身を乗り出し、ひそひそ話をするように言ってきた。

「でも、基様。
 これは、私の勘ですが――」

 が、そこで、ふと気づいたように時計を見る。