基が部屋にいると、誰かがドアをノックしてきた。

 ……あやめ、なわけないよな、と思ったとき、
「基様、デザートをお持ちしました」
と高倉の声がした。

「いらないと言わなかったか?」
と言ったのだが、そうですかー、と言いながら、高倉は入ってくる。

 聞け、お前、主人の話……。

 窓際のテーブルにデザートを置く高倉に、
「お前、入っていいとも言ってないのに、勝手に入ってくるなよ」
と言うと、

「いやあ、あやめ様といちゃついてる可能性でもあれば、遠慮しますけど。
 今のところ、まったく、そのような兆候はないですからね~」
と余計なことを言ってくる。

「それどころか、あんな顔で睨んでたら、怯えて逃げ出しちゃいますよ、あやめ様」

「あれが、そんな繊細な女か」