高校の入学式が終わり新しい学校生活に慣れてきた4月の終わりの頃だった

私、水瀬ほのかは中学では進学するわけでもなく地元の中学校に通っていたため電車を使って学校へ行くということが新鮮で毎日わくわくして登校していた。

最寄りの桜ヶ丘駅では軌道線の電車が通っておりその電車のホームを通って地下鉄の通る駅へ行く。

桜ヶ丘駅がちょうど終点なので降りる人が多く、乗っている人が降りる場面と出くわすとホームを通る私は、もみくちゃにされてしまう。でもホームを通る道が駅に1番近いのでしょうがないと思っている。


いつものように登校していると見覚えのある男の子を見つけた。
後ろ姿だったので顔ははっきりと見ることはできなかったが、後ろ姿や歩き方まだ伸びきっていない身長に心が踊った。晴に似てるなあ…。
中学時代好きだったクラスメイト・藍沢晴に似ているのだ。
彼は電車を降りると私と同じ駅の方へ向かった。
私は降りてきた他の人たちにもみくちゃにされながら晴を目で追いながら駅の方へ向かった。
駅に着くと彼は東口の私とは違う西口の改札を出てしまった。
ああ、違う方に行っちゃった…
「また会えるといいなあ…」と私は呟いた。晴とは連絡先も交換していない。というか、晴の連絡先を知っている人はあまりいないのかもしれない。
中学時代、私の友達は誰も晴の連絡先を持っていなかった。女子だけでなく、男子も知ってる人はいなかった。だから、ここでまた出会えたことが私はとても嬉しかった。


次の日、私はまた晴に似た彼に出会えることを信じて昨日と同じ時間にホームへ行った。
いた…‼︎彼にまた出会うことができた…!
私は嬉しかった。できることならまた話したい。そして連絡先を交換してこれからも繋がれるようになりたい。そう思った。だが、中学時代のことを思い出すと少し迷ってしまう自分がいた。
こんな私が話しかけてもいいのだろうか。嫌がられたりしたらどうしよう…。不安が募った。
そして考えているうちに駅の改札の方へ来てしまった。
彼が行っちゃう、晴じゃないかもしれない、でもまた出会えたことは奇跡でもう会えないかもしれない…

私は勇気を出して声をかけた
「晴…!」
そうすると彼は驚いたような反応をして振り返って私に気づくとふにゃっと笑って私に手を振った。



変わらない、やっぱり晴だ。