そう言われた瞬間、篠原君の顔が頭を過ぎった。
だけど、好きかって聞かれたら……分からない。
異性の中では一番意識している存在なのかもしれないけれど、自分でもよく分からないこの気持ちを、今ここで言葉にする必要はない気がして、

「……まあ、うん」

と返した。


「だったら、松永と付き合うのも良いんじゃない?」

……やっぱり、香は私と松永君をくっつけようとしている。
理由は分からない。
でも、今まで香が私と男子をくっつけようとすることなんかなかったし、寧ろ私が男子と関わらなくても済むようにしてくれていたのに。



「ね、ねえ香。何かあったの?」

「え、何が? あ、そう言えば夏休みに入ったら、久し振りにうちに泊まりに来なよ! お母さんもみずほに会いたがってるしさ!」

「あ、うん……」


話が逸れてしまった。いや、逸らされた?

香とは小学一年生の頃から一緒にいて、お互いのことは何でも分かり合っていると思っていた。
でも今、隣で笑っている香の考えていることが、何も分からない。


私は、松永君と付き合いたいとは考えてないんだけどな。