「その頃はさ、気になってたって言うより、その子のことが凄く好きで。それなのに、好きって言えずに、つい意地悪なことばかりしてた。その祭りの日も、その子のりんご飴取り上げたりとかしちゃって」

「そっか。そうなん……」


そうなんだね、と言おうとして、言葉が途切れてしまった。


なぜか、その記憶が私にもあるような気がしたからだ。


いつ? 確か、私も小学生の時だ。

私に同じようなことをしてきた男の子は、〝彼〟しかいない。そうーー朝日君だ。



そんな、まさかね。

そう思うのに、もしそうだとしたら、私が篠原君に対していつも感じる不思議な懐かしさの正体に説明がつく、なんて考えてしまって。



「……その子は、俺のことを今でも嫌いだと思う。当然だよな、ずっといじめてたんだから。
……だから、嫌われるためには俺の正体をその子に言えばいいんだ」


ドキン、と心臓が跳ねた。急に、何だか不安に襲われたから。


「正、体って……?」

恐る恐るそう尋ねると、篠原君はゆっくりと口を開いた。



「小学生の時、桜井にラブレターを渡した〝朝日〟は俺だよ」