「篠原君は良い人だから、そんな簡単に嫌われることは無理だよ」

私がそう告げると、彼は一瞬呆気に取られたような顔をして、だけどすぐに。


「……その子に嫌われることは、きっと簡単だよ。今まで内緒にしていることを、打ち明ければいいんだ」

「内緒にしていること?」


何だろう。一体彼は、その好きな女の子に対して、どんな隠し事をしているのだろう。



それは、私が聞いてもいいこと?なんて思わず聞きそうになってしまったけれど、堪えた。
きっと篠原君にとって凄く大事なことだろうから、私が下手に口を出してはいけないだろう。



「……小学四年の頃さ、男友達と数人で夏祭りに行ったんだ。その時に、同じクラスの女子のグループにも偶然会ってさ」

突然、彼の過去の話が始まったから、驚いた。
だけど不思議と、それを聞きたい気持ちもあって、「そうなんだ? それで、その後どうしたの?」と続きを促した。


「結局、その女子達も一緒に祭りを回ることになってさ。あんまり気乗りしなかったんだけど、女子グループの中に、その女の子もいて」

「えっ? じゃあ、小学生の頃に気になってた女の子のことを、今でもってこと? 凄い! 素敵だね!」

「別に……。その子からしたら、想い続けられて鬱陶しいだけだろ」

「そんな訳ないよ、絶対にその子も嬉しいよ! 少なくとも、私だったらとっても嬉しい!」

私がそう言うと、篠原君が困ったように小さく笑う。
あれ、変なこと言っちゃったかな……。