私から質問しておいてあれだけれど、意外な答えだった。
何となく、篠原君は女の子には興味ないのかなと思っていた。
篠原君は松永君と違い、声を掛けてくる自分のファンの女の子達に優しくはない。特別冷たい訳でもないのだけれど、あまり目も合わさず、挨拶だけして去ってしまうことが多いイメージだ。
だから、気になる人がいるという答えは意外だった。


「ど、どんな人? 告白したりはしないの?」

私がずけずけ立ち入っていい話題ではないとは思うも、どうしても気になってしまう。


すると篠原君は、戸惑いの表情を浮かべながらも私の質問に答えてくれる。


「……告白する気は、ない」

「そうなんだ……。どうして?」

「……その子のことを好きになる資格が、俺にはないから」


……篠原君の言っている意味が、よく分からなかった。

人を好きになることに資格があるとは思えないからだ。


だけど私には恋愛経験が全くなく、気の利いたアドバイスが思い浮かばなくて、口籠ってしまう。


すると、篠原君は。



「……でも、このままだと本当に好きになってしまいそうなんだ」

「……え……?」

「だからいっそのこと、嫌われてしまいたい」


嫌われてしまいたいって……。そこまで思い詰めるほどに、彼はその女の子のことが好きなんだということが分かった。


だけど。



「……それは、無理だよ」

「え?」