そんなことを考えて悶々としていた、その時だった。


「あっ」

突然、妙な声を出して立ち止まった私に、篠原君が数歩先で足を止めながら振り返る。


「どうした?」

「は、鼻緒が切れちゃって」

お気に入りだからという理由で昔からの古い下駄を履いてきてしまったのだけれど、まさかこんなにも早く鼻緒が切れてしまうとは。


「大丈夫か? 代わりの靴……なんて持ってる訳ないか」

「あ、応急処置だけど直し方は分かってるから大丈夫。でも、人の少ない所に移動したいかも……」

「分かった。とりあえず俺の肩、掴まって」

篠原君はそう言って、私の右手を自分の左肩へと誘導してくれた。

そうやって篠原君に身体を支えてもらいながら、りんご飴の屋台の裏へと移動する。
ちょうど椅子くらいの高さで腰掛けられそうな縁石があったので、そこに座った。

家から持ってきた古いハンカチを巾着の中から取り出し、三センチ幅に裂く。それを五円玉の穴に通し、下駄の底の穴から通し、結んだ。

よし。これで何とか、歩くことは出来る。

けれど……。


「香と松永君、どこ行ったかな……」

混んでいたのもあり、香達に声を掛ける間もなく、場所を移動してしまった。


「まあ、電話すればいいか」

そう思い、携帯を取り出して香に電話してみるも、繋がらない。松永君と話が盛り上がっていて、私と篠原君がはぐれたことに気付いていないのかも?