「そっか。そうだったね」

「それに、私にはみずほがいればそれでいいのさ」

「もー。香ってば」

そんな会話をしつつコンビニまで近付くと、松永君と篠原君も私達に気付いた。


「おー、二人とも浴衣めっちゃ可愛いじゃん!」

そう褒めてくれたのは松永君だ。ストレートに褒められると、恥ずかしいけれどやっぱり嬉しい。


「松永君、初めまして。みずほの幼馴染みで親友の、天野香です」

香が松永君に向かって右手を差し出すと、松永君も「あっ、初めまして。みずほのクラスメイトの、松永昴です」と、にこやかな笑顔で香と握手する。
しかし。


「いって」

彼の笑顔が、若干歪む。
どうやら、香の握手が思っていたより強かったみたい。

彼から手を離した香は、ちょっぴり圧のある笑顔を見せながら、


「あんたがみずほにしたこと、知ってるんだからね」


と言う。
彼女のオーラに、あの松永君も「……はい。その節はすみませんでした」と謝らざるをえなくなった。


「ちょっと、香」

「何? 私はみずほを泣かせる奴は許せないから。まあ、今はみずほともクラスで仲良くしてくれているみたいだし、これ以上は何も言うつもりないけど」

そう言い終わると香は、今度はさっきよりは柔らかな笑みを松永君へ浮かべた。どうやら、この話をいつまでも引きずるつもりはないようで安心した。


早速屋台の方へと歩いていくと、賑やかな雰囲気に歩を進めるごとにワクワクしてくる。

射的や輪投げや金魚すくいなどの出し物は、どれも苦手だからあまり惹かれないけれど、綿飴やりんご飴など、お祭りの屋台じゃないとなかなか食べる機会がない物たちには興味を示してしまう。
私、意外と食い意地張ってるのかも?