◯昴side
みずほが教室を出て行って、その場には当然、俺と篠原の二人きりになる。
篠原は最近、俺とみずほが二人で話していると絶対に俺達に近付いてこない。
俺からみずほへの気持ちは周囲から見ても丸分かりだと思うから、俺に気を遣ってんのか? と思うのだが、そもそも大して仲良くもないこいつにそんなことで気を遣われる義理もない。
「……なあ、篠原」
俺が名前を呼ぶと、篠原は顔だけ俺に向ける。
「……何?」
篠原に話しかけた理由。
それは、俺とみずほのことで気を遣うなって伝えるため……
ではなく。
「……立ち入ったこと聞いて悪いけどさ、篠原って、確か両親が離婚してたよな?」
「……ああ」
俺の予想が当たっているなら、篠原は俺が言おうとしていることが分かっているのかもしれない。
「両親の離婚前の苗字、確か朝日だったよな?」
俺の質問に、篠原は動揺することもなく「ああ」とだけ答える。