「え?」

「バスケ部の先輩に言われて私をマネージャーに誘うために話しかけたのは分かってる。初めて話しかけられたあの時は私も驚いたし、男子に話しかけられたくない、とも思ったはずなのに……今思うと、松永君があの時話しかけてくれなかったら、私は結先輩とも、女子バスケ部の人達とも話すことはなかった。だから、松永君には感謝してるの」


私の言葉に松永君は、何も答えず、ただじっと私を見つめる。



「松永君。あの時は一人ぼっちだった私に話しかけてくれてありがとう。
あの日に話しかけてくれたのは、私をからかうためだけじゃなかったって、信じたい。



だから改めて、私と友達になってください」




……うん、と松永君が笑顔で頷く。

彼の笑顔を見て、私もつられて笑った。



「……ちなみに、告白の返事はやっぱり、NO?」

「それは、うん、ノーだね……」

「そっか。まあ、そうだよな。今は、友達になれただけでいいや」


松永君がそう言ったのとほぼ同時に、背後に人の気配を感じた。

振り返ると、そこにいたのは篠原君だった。


「篠原君」

篠原君は、私と松永君の顔を、無表情で交互に見つめる。


篠原君には相談に乗ってもらったし、結果をちゃんと話した方がいいかな……とも思うけれど、松永君本人の前ではちょっと話しづらい……。


言葉に困っていると、松永君が先に口を開いた。


「なあ、みずほ。一緒に帰ろう」