松永君は私の手を引いたまま階段をのぼり、屋上へとやって来た。


「うん、誰もいないな」


辺りを見回してから、彼は扉をガチャッと閉めた。


こんな所へ連れてきて、何を話すんだろう……。
それにその髪……。

ショートヘアも似合っているけれど、長かった髪をバッサリ切るなんて、大きな理由があったはずだ。


すると彼は、ゆっくりと口を開いた。



「本当はこういう時、坊主にするべきだとは思うんだけど」

「え?」

「ごめん、坊主は無理だったからこれで勘弁して」

「え、え……?」


坊主、勘弁、って……まさか……



「わ、私に謝るために、髪を切ったの?」

驚いて問いかけると、「うん」と返される。


ウソ、本当に……?

髪を切ってまで、私に改めて謝ろうとしてくれたってこと……?



「で、でも私昨日、会話とか普通にするよって……」

「普通なんて、嫌だったから」

「え?」


風がそよぎ、松永君のすっかり短くなった髪が揺らぐ。



「……俺は、みずほの特別になりたいから」