翌日の朝練終了後、制服に着替えてから教室に向かって渡り廊下を歩いていると、前方に篠原君の姿をとらえた。


「篠原君。朝練お疲れ様」

少し駆け足で近寄ってから声を掛けると、彼も私に振り向き、

「ああ、桜井。お疲れ」

と答える。



「練習、先月よりハードになってきてるよね。大丈夫?」

「大会近いからな。俺は少しハードな方がちょうどいいよ。桜井こそ、マネージャー業忙しいだろ」

「うーん、篠原君達に比べたら私なんて全然だよ」

「……ていうかお前さ」

「ん?」

「男子、苦手だよな? その、初めて会った時からそう感じてて」


あっ……バレてた。
指摘されると恥ずかしいけれど、その通りなので素直に頷く。


「でも、バスケ部の人達とは多少は話せるようになってきたよ。まだまだだけどね」

「……俺とは結構普通に話してない? 今も、桜井から声かけてきたし」


それは、確かにその通りだった。
自覚はある。
でも、理由はよく分からなくて。



「……最近ね、篠原君のこと、なぜか昔から知ってるような気がして」

「え……」

「だから他の男の人より話しやすいのかな? って、何か変なこと言っちゃったね! 忘れて!」

「うん……」

すると篠原君はなぜか難しい顔になり、そのまま黙り込んでしまった。


……妙なこと言って、引かれちゃった……?