「俺は何も……」

「ううん。篠原君の優しさに、凄く救われたんだよ……」


篠原君は優しい。初めて会った時から、ずっと私のこと気にかけてくれていたんだもの。



「……本当にありがとう」


お礼を伝えると、篠原君は心配そうな顔をして、だけど小さく頷いてくれた。




「えっとね、目標は来月までに友達三人作ることなの」

篠原君と一緒に体育館へ向かう途中で、密かに胸に抱いていた目標を彼に話した。


「さすがにこのまま新しい友達0人は寂しすぎるから……目標を立ててみたよ」


すると、それを聞いた彼は。



「……じゃあ、あと二人だな」

「え?」


「……一人目は、ここにいるだろ……」



視線を私からやや逸らす彼の表情は、少しだけ照れているように見えて……



「……うん。ありがとう」


昨日傷付いた心が、徐々に癒されていくのを感じる。




そうして渡り廊下まで出た時、雨が降り始めていたことに気が付く。



「降ってるな。空は明るいから、すぐに止みそうだけど」

日が出ている空を見上げながら、篠原君が言う。


「そうだね。早く止んでほしいなぁ」

「雨、嫌い?」

「うん……。ただ、雨が嫌いというより、カエルが苦手で。ほら、雨が降ってるとカエルがよく出てくるから……」