「母さん! 余計なこと言うなよ!」

「余計なことじゃなくて大事なことでしょ? 家に帰ってくると毎日みずほちゃんの話をしてたじゃない!」

「あああだから言うなって!」


こんなに慌てた梓君は初めて見る。
まさか当時、お母さんに私の話までしていたなんて知らなかった。
だからこそ、お母さんも私のことを覚えてくれていたのかもしれない。



「そうだったんだね。……嬉しい」

梓君にそう伝えると、彼は気恥ずかしそうに目線を私から逸らし、黙り込んだ。


梓君と高校で再会出来たこと、付き合うことになったこと。改めて、奇跡のような出来事だなって感じる。



「みずほちゃん、小学生の時のアルバム見る? みずほちゃんも写ってると思うし」

「わあー見てみたいです」

「や、やめろよ恥ずかしい!」


梓君の阻止の言葉は聞き入れる様子もなく、梓君のお母さんは席を立ってアルバムを取りに行こうとする。
しかしちょうどその時、家の電話がかかってきて、梓君のお母さんは電話に出るため廊下に出て行った。


「はあ、助かった」

「えー? 昔の写真見たいよ」

「家に帰って自分のアルバム見ろよ」


自分のアルバムを見たところで、当時の梓君は多分そんなに写っていない。私が見たいのは、当時の自分ではなく、当時の梓君なのだ。


と、そんなことを考えていたら、梓君のお母さんが電話を終えてリビングに戻ってきた。

何やら申し訳なさそうな顔をしている。