と、聞き間違えじゃないかと思うくらい、信じ難い答えが返ってきた。


だから……あんなに素っ気なかったの?



「……緩んでくれてもいいのに」

「やだよ。かっこ悪い」

「そうかな? やっぱり、不安になるからちゃんと言ってほしいよ。って、私も気持ちを言葉にするのはまだまだ苦手だけど」

「……分かった。善処する」


俺達、案外似た者同士なのかもな、と篠原君は言った。



「それにしても、莉由とそういう関係に間違えられるとは本当に思わなかった」

「えー……あんなに仲良ければそう思っちゃうよ」

「仲良いか? 別に普通だろ。桜井が松永と話してるのと同じ感じだって」

「絶対仲良いよ。莉由さんとは下の名前で呼び合ってるし……」


言ってからハッとした。
しまった。確実に変なことを言ってしまった。



「え、えーと、今のは変な意味はなくて!」

「名前か……」

「ほ、ほんとに忘れて!」

恥ずかしさに耐えていると、篠原君がぽつりと、



「……みずほ」



と、呟いたのだった。




「え……?」

「……何だよ」

「い、いえ」


緊張して、身体が上手く動かない。

ただ名前を呼ばれただけなのに。

それだけで、こんなにも嬉しい。



「……で、お前からは?」

「えっ、あっ」

「……いや、やっぱいい。俺、自分の下の名前、女子っぽくてあんまり好きじゃないから」


そう言えば、その話は香から最近聞いた。下の名前があまり好きじゃないから、小学生時代にもらったあのラブレターには、当時の名字の〝朝日〟と書いたことを。