「篠原君、私がこの服着てるの、嫌なんだよね?」

「え?」

「い、いいのいいの! 似合わないって思って当然だよ!」


とは言えここで着替えることは当然出来ないので、とりあえずヘッドドレスだけでも外そうとした。


けれど、外そうとしたその手を、なぜか篠原君に掴まれてしまう。



「篠原君?」

「あ、その……」


反射的な行動だったのだろうか、篠原君自身も戸惑った顔をしている。
だけど私の手は掴んだまま離さない。



「……似合わないなんて一言も言ってないだろ」

「え?」

……まあ、確かに直接的には言われていないけれど。


「だって篠原君、何も言ってくれずに無視したし……」

「それは……」

「あ、勿論、無理に褒めてもらいたかったとかじゃないけどーー」

「似合ってる」

「……え?」

「……可愛い」


ボソッと呟くような声だったけれど、確かに〝可愛い〟と言ってくれた……?



「え、え?」

「……似合わないなんて思う訳ないだろ」

「だ、だって……」


確かに、私への感想は漏れなく何でも伝えてよ、なんて言うつもりはない。

だけど、初めてデートしたあの日、篠原君は私の私服を褒めてくれた。

私服は褒めてくれたのにメイド服には何も言ってくれなかったということは、そのメイド服が似合っていなかったから、ってことじゃないのかな?


それを篠原君にそう伝えると。



「……可愛すぎて頬が緩みそうだったから、なるべく顔を合わせないようにしてた」