無意識に足が向かったのは、屋上前の階段の踊り場。

人目につきたくない時はここに限る。すっかり穴場になっていた。


でも、今回に限っては場所の選択を誤ったかもしれない。

だってここは、篠原君とお互いへの想いを確認し合った場所だから。
ここにいたら、どうしたって篠原君の顔が浮かんでしまう。


そんなことを考えつつも、とりあえず、階段の一番上の段に腰をおろした。


篠原君、今頃莉由さんと楽しく話してるのかな……?そしてこの後、一緒に学祭を回るのかな?



せめてこんな恥ずかしい格好をしていなければ、もう少し自信を持ってあの場にいられたかもしれない。

……いや、私はきっと逃げ出しただろう。
強くなりたいと思ったのに、肝心なところでまだ強くなり切れない。



……それなのに、篠原君を誰にも盗られたくないという想いだけがどんどん膨らんでいってしまう。



「嫌な女だなぁ、私……」


自己嫌悪を抱きながら、そんな独り言をぽつりと呟いた、その時だった。



「桜井?」



その声が、階段の下から私の名前を呼ぶ。

何で、来てくれたの?



「篠原君……?」

まさか、追いかけてきてくれた?何で?


篠原君がゆっくりと階段を上がってくるのに合わせて、私も立ち上がった。



「ど、どうしたの? 何でここに?」

「それはこっちの台詞だろ」

「わ、私は、その……」

まさかヤキモチ妬いて逃げ出してきた……なんて言えず、黙り込んでしまう。