困っているタイミングで助けに来てくれるなんて、本物のヒーローみたい……なんてきゅんとしたのも束の間。


「別に」


としか返してくれなかった。
私に視線を向けることもほとんどなかった。

やっぱり、素っ気ない……。
元々クールな人ではあるけど、二人で話す時はいつもはもっと優しいし、目も合わせてくれるのに……。

それだけこのメイド服が似合ってないってこと、だよね?
もう、嫌だよ。篠原君に嫌われる前に、早く脱いでしまいたいよ。


そんなことを考えながら泣きそうになっていた、その時だった。



「あっ! 梓のクラス発見!」

何やら聞き覚えのある声がして、声がした方へ視線を向ける。


すると、屋台の前にいたのは莉由さんだった。



「莉由。来たのか?」

篠原君が反応すると、莉由さんは嬉しそうに近くまで駆け寄ってくる。


「来たのか?じゃないよ! 絶対行くねって言ったじゃん!」

「ああ、そうだったな」

篠原君が莉由さんと会話していると、他のクラスメイト達もわらわらと集まってくる。


「何この子! 可愛い!」

「篠原の知り合いか?」


男子達にワッと群がられても、莉由さんは戸惑うことなく「山瀬莉由です!」と明るい笑顔で挨拶する。
莉由さん、コミュ力高くて凄いなぁ……。私がこんなに一気に男子に話しかけられたらきっと失神してしまうよ。


それにしても莉由さん……もしかして篠原君に会うためにこの文化祭に来た、のかな?
誰かと一緒に来ている気配もないし、一人で、わざわざ……?


もしかして、莉由さんって篠原君のことが好きなんじゃ……。